和を感じる焼き物 南蛮焼 一宮(いちのみや)
南城市知念のカフェくるくまのすぐ側に、見事に手入れされた庭が広がる、静かで厳かな陶芸工房
「南蛮焼 一宮」があります。
門をくぐり、緑の並木道を進むと、日本家屋風の建物が立ち並んでいます。
木の柱や漆喰壁がぬくもりを感じさせ、そして沖縄らしいソテツの木が植えられており、和と琉が融合された他にはない風景が楽しめます。
庭の案内どおりに進み、展示室にお邪魔しました。純和風な佇まいに作品がずらり。
時間を忘れてゆっくり作品と触れ合うことができます。
一宮さんは南蛮焼という土を焼き締めた作品が主です。つるりと滑らかなものや無骨ながらもしっとりと手になじむ茶器など同じ素材を使っていても、表現しだいで印象がまったく変わります。
一宮さんのギャラリーには、一宮侑さんと息子さんの現さんの作品が並びます。
侑さんの作品は土の素材感を存分にいかした、作品。
きれいな赤の残る器は温度・湿度によってムラができたり割れたりするので、展示されるのは選ばれたものばかり。
沖縄で昔から生活に密着していた「クチャ」を使った作品もあります。
▲深い緑と珊瑚で窯変模様が味をだす、クチャ土の茶器。
▲かえるがたたずむ、かわいらしいクチャ土の作品。
クチャの作品は深い緑色をしています。クチャは温度が低いと緑の色合いが死んでしまい、白くなってしまいます。
しかし、温度が高いと今度はぐにゃりと変形してしまい商品にならず、温度調整が難しいそうです。
しかし、ギャラリーではその変形した壷やコーヒーカップも飾られていて空間にアクセントが生まれています。変形の壷は花器として使用すると面白そう。
他にも動物をモチーフにした香炉が目を惹きます。
ラクダやゾウなど、エキゾチックな動物のモチーフが香炉を飾ります。
工房を除いてみると、図鑑を広げて創作に没頭する侑さんがいました。
「今はあんまり仕事してる感じじゃないから、撮らないで(笑)」という侑さん。無理を言って撮らせていただきました。動物図鑑を広げながら見事に絵図を掘り込んでいきます。元々は東京芸術大学で彫刻を専攻していたとのこと。なるほど、リアルに形どられた生き物たちは、香炉に存在感を増していきます。
他、乾燥中の作品もみることができました。
沖縄は乾燥が難しい。温度や湿度の変化が激しいと、ヒビが入ってしまいます。
■敷地内すべてが一宮さんの作品
一宮さん一家が沖縄に来たのは昭和51年。陶芸を始めたときは東京にいたが、南蛮焼に魅了され、南の方へ移住していったそう。屋久島でも一時創作活動をしていたとのことです。沖縄で活動を開始したのは沖縄市の知花で、赤土やクチャ土を使った作品作りは今と換わらない。その後、旧知念村のこの場所に縁あってたどり着き、海に魅了されて決めたそうです。
「広い敷地内には、何もなかったんですよ。」そう語る奥様にちょっと案内してもらいました。
庭は高低を上手く利用した、散策が楽しめる場所となっています。そこに数件並ぶ木造家屋。
なんと、この家屋すべてが一宮さんの手づくりとのこと!
ものづくりを日常でも大いに楽しむ、そして細部までこだわる一宮さんの作品づくりは生活すべてに及んでいて、一宮の工房とその敷地で感じることができます。
■陶器と漆器をあわせた、陶漆作品
ギャラリーに戻って、現さんの作品を拝見しました。現さんの作品は薄く形作った器に生地を張り、漆を施す「陶胎漆器(とうたいしっき)」と呼ばれるもの。持ってみると、その軽さに驚く。土の素朴感に漆の華やかさが加わった魅力的な作品になっています。
お父さんの侑さんと一緒に作品展に出展することもしばしば。一家で精力的に創作活動をされています。
侑さんの質素な中に品が佇む作品、現さんの鮮やかな陶漆作品の両方が楽しめる、贅沢な空間に一度その身をおいてみてください。時間を忘れ、心地よい時間が流れていきますよ。
■ギャラリーの一部をご紹介
▲ひょうきんな釣り人が腰掛ける。
▲日常使いもできる、コーヒーカップも。
▲一宮の敷地には、ネコがたくさん!みんな気持ちよさそうに昼寝をしていました。
▲入口。緑に囲まれるプライベートな空間が楽しめる。本当に陶芸が好きな人が心ゆくまで楽しめます。
■南蛮焼 一宮
住所:南城市知念字知念1180-10
TEL:948-1613
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